大滝秀治さん、逝く。

大滝秀治さんがお亡くなりになった。

その速報に接した時、一瞬浮かんできたのは映画「ブルークリスマス」の一場面だったが、
あとに続いて5人の人物の姿が、私の脳裏に次々に現れた。
1976〜79年にかけて製作された、市川崑監督による東宝映画 金田一耕助シリーズ全5作、その全てに出演された大滝さんが演じられた、大山神官(犬神家の一族)、権藤医師(悪魔の手毬唄)、儀兵衛(獄門島)、加納弁護士(女王蜂)、加納巡査(病院坂の首縊りの家)の5人。

いま、手元にキネマ旬報1979年5月下旬号(通巻761号)がある。
キネ1

シリーズ最終作「病院坂の首縊りの家」の特集号だ。
キネ2
(後に「八つ墓村」「犬神家リメイク版」を市川監督はお撮りになったが今回は除外する)

思えば中学生の時分から憧れ、勝手にお慕いしてきた市川崑監督が逝去された時、私にとっての映画が消えはじめた、というか、死にはじめた、との奇妙な感覚を抱いたものであるが、いま、大滝さんの訃報に際し、私にとっての映画がいよいよ終わるかもしれないという底知れぬ喪失感を強く感じ始めている次第。

この特集号に大滝秀治さんのインタビュー記事が掲載されているので、、、
キネ4
以下にその全文を引用させていただき、ここに慎んで哀悼の意を表したいと思う。

ちなみに下表のとおり、主演の石坂浩二氏の他にシリーズ全てに出演された俳優は5名おられるが、そのうち2名の方がすでに鬼籍に入られており、そのうえ今度は大滝さん、なのである。
キネ3

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<以下、キネマ旬報1979年5月下旬号(通巻761号)より>

病院坂の首縊りの家 特集 
  市川=石坂コンビによる”金田一シリーズ”を支えた人たち


●大滝秀治● 映画って面白いもんだなぁー

 西武線・野方の駅からご自宅にお電話すると、道がわかりにくいので駅まで来て下さるという。お家の方がいらっしゃるのかと思っていたら、なんとご本人が、自転車に乗ってひょいと現れたので、もう、びっくりしてしまった。大滝さんは、なんだかとてもテレるタイプの方のようで、ご自宅に着いてテープを回しはじめても、やたらと「まあ、まあ」などとおっしゃって、しきりにお酒をすすめて下さる。東京では買えない新潟の銘酒越之寒梅ときくと、こちらもつい気をそそられて杯をかさね、脱線しがちだ。
 「昭和五十年頃までは、ほとんど映画に出してもらえなかったのよ」と、大滝さん。
「森谷司郎監督の『首』と、熊ちゃん、熊井啓監督の『日本列島』・・・他にも数えるくらいしか、映画はないの。よく出るようになったのは今井正さんの『あにいもうと』の頃からかなあー」
 このところ、舞台は休んで映画専門って感じですね、と申しあげると「いえ、いえ、テレビの消耗俳優ですよ」と、あの独特の口調で、大テレのご冗談をおっしゃる。金田一耕助シリーズは、上の表のように大山神官に始まり、いつも違う役で出演している。しかも、事件のカギをにぎっているというか、事件の核心を説明する役が多い。
 「石坂さんとからむ役で出してもらっているでしょ。台詞のやりとりが、いつもとても長くて、ワン・シーン、ワン・カットの長回しが多いの。だからNG出すと、会社に損かけるような気がして、考えちゃうわけよ。貧乏症なのかなー」
 市川監督は感性の人で、いつも気さくに、自由に芝居を流してくれるという。だから楽しみながら自分流にやっているのだが、劇場で見ると、いつも監督の思うツボにはまっていることに気づくという。
 「テストをくり返しているうちに、いつのまにか、なにげない軌道修正がなされているのね。それを見ると、映画って、面白いもんだなーと、いまさらながら思うわけよ」
 「映画っていうのは、結局のところ、脚本と監督できまるのね。だから、うまくできたからって、デカイ顔するなって、自分に言いきかせるわけ」
 映画のキャリアは短いのに、いい監督に恵まれて、それがいちばんの幸運だという。「高倉健さんが、いつも言ってるでしょ。大切なのは、人との出会いだって。これですよ、これ」
 俳優というのは待つものであり、待つことによって、ステキな出会いがあるのだという。ただ待つこと・・・これがわかっていても、これまでに、たったひとつだけ、ぜひとも自分でやりたかった役があるという。それは「デルス・ウザーラ」のデルス。「あれはやりたかったです。それと、黒沢明監督が、代表作は? と聞かれると、いつも次の作品ですとおっしゃるそうですね。いい言葉ですね。私もこれからは、そう言おうなんて思っているんですよ」と、杯を重ねながら、ちょっとカッコつける。さて、大滝さんの次回作はなんだろう?
(3・27/中野区野方の大滝家にて)

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飾らないお人柄…実直なお姿…飄々として時に笑いを誘う…
大滝さんのお芝居は多岐に渡るが、私は『生』に潜む弱さ、醜さ、身の毛もよだつ残酷さ
といったものを叩き込まれた気がする(実際、そういう意味で”怖かった”…)。
もちろんそれは、他では得難いありがたい体験であるのは明白だ。
だから、である。
映画って、本当に面白いものなんだ・・・

キネ5

ご冥福を心よりお祈り申し上げます。

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喜多村 武

Author:喜多村 武
 映像Director、絵本作り、
 イラスト作画、アニメ制作、
 鉄道模型の設計などしている
 ”アトリエざんまい” な日々。
 最近は大学にて講義をさせて
 いただいたりも…。

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