8月の虫たちよ

人間やその他の生物にとって生きていくのに都合が良い状態を、自然が作り出すことはない。
もし人間や生き物にとって都合が良い状態が続くとしたら、それは単なる偶然なのであって、
気まぐれに移ろいゆく自然の中で、人間は、生き物は、ただ漫然と活かされているにすぎない。
ごくクールに、客観的に観察すれば、つまり我々生物の営みとはそうゆうことではないかと。

数日前(というか先週土曜日)の朝。
不意にバリャバリャバリャという大きな音が耳に届きました。

《セミ…どうやらすぐ近くから聞こえるようだ》
そう考えながら、窓から覗いてみると…

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ベランダに1匹のアブラゼミがひっくり返っていました。

《昨夜から寒気が南下したせいで、関東地方は猛烈に気温が下がったからなぁ》

注視すると、アブラゼミは足をゆっくりと力なく動かし続けていました。
《この異常な寒さ…かわいそうだけど、このまま死んでしまうのかな…》
そんなことを考えていると、、、

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びりりりっと音を立ててアブラゼミは思いきり羽ばたき、体をくるりと1回転。
とりあえず本来の姿勢に戻りました。

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続いて、おぼつかない足取りでベランダの先端へと歩を進め、やがて、、、

びびびび、という音を残して、ぷいっと何処かへ飛び去りました。
semi4.jpg
(飛び去る瞬間はもちろん撮影できず、なにしろ一瞬の出来事なので)

《死んじゃうわけじゃなかったんだ…寝てたのかな?》
ワタシはそう思い、少し微笑んだのでした。

虫の寿命って考えてみたことはありますか?
たとえばアブラゼミは、幼虫でいる期間は6~7年とたいへん長いのですが、その後成虫に変態してからは、ほんの1~2週間しか生きず、短命だと言われています。
(もっともこれは飼育下での話で、野外では1か月ほど生きるという説もあるようですが…)
カゲロウの場合、成虫の寿命はたった1日とされています。
(カゲロウの成虫には摂食機能がないため、餌をとることができないんです)

小学5年生の頃、カブトムシをいつまで長生きさせられるか、試したことがあります。
浴室に飼育ケースを置いて温度・湿度をなるべく高く維持したところ、12月末まで生きました。
その当時の友人は、たしか翌年2月頃まで生かし続けることができたように記憶しています。
40年近く昔の話です。情報豊かな現代ではもっと長生きさせられる術があるかもしれません。
しかしながら自然界に生きるカブトムシは、おおむね夏の終わりとともに死期を迎えます。

なぜ虫たちは早々に死期を迎えるのでしょう。
キチン質が気温の変化に耐えられないのか。
限られた短い期間に生きるエネルギーを全て使い果たすよう仕組まれた、長くは命を保つことができないような情報があらかじめインプットされているのか。
或いは、外骨格で囲まれた体内に仕組まれた生命維持システムにそもそも無理があるのか。

夏の虫たちにとって、ここ数日の急激な気温低下はとてもツライものであるに相違ありません。
一時的な寒さで、夏の虫たちがやられてしまわないことを祈ります。
彼らはこの世に繁栄するあらゆる動物や植物の命を支える生態系の維持に欠かせない存在です。
我々人間が生きてゆけるのは、小さな虫たちのおかげでもあるのです。

《8月の虫たちよ、あと少し、夏の終わりまでがんばって生き存えておくれ。
 もう少ししたら、また束の間、暑さが戻ってくるらしいからね。》

”温暖化”などという言葉(というか記号)を、軽々しく使いたくはありませんが…
今夏の急な気温低下も、そうした気象の大きな変動によるものなのかもしれません。
虫たちの、そして動植物の生息域の北上は、世界各地ですでに始まっています。


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http://www.matatabi.net/Poetry/Yosi_03.html
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蜻蛉といえばこの詩を思い出します。
好き嫌いはあるかと思いますが、
私はとても好きです。

ありがとうござういます。

詩を嗜まれる方は素敵だなぁと思います。
私の場合、あまり自信がありません…ちゃんと詩を味わえているのかどうかおぼつかなくて…(笑)。

かげろう、かわいそうな虫なんです。
ウスバカゲロウと間違われて「あなたの幼虫はアリジゴクでしょ?」だなんて。
やはりかげが薄い存在なのでしょうか…。

プロフィール

喜多村 武

Author:喜多村 武
 映像Director、絵本作り、
 イラスト作画、アニメ制作、
 鉄道模型の設計などしている
 ”アトリエざんまい” な日々。
 最近は大学にて講義をさせて
 いただいたりも…。

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