Citroën BX16TRS 『The early model conversion』

いつかは決定版と言えるレポートを書きたいと考えていた本案件。
先般某氏よりありがたいご質問を頂戴しましたので、ここで思いきって記事としてまとめ、
これをご質問への回答とさせていただこうと考え筆をとりました。
内容は、1987年以降製造されたBX16TRS後期モデルの外装を、1982〜86年まで製造され
た初期モデルにコンバートする工程をまとめたもので、89年モデルに施術を行いました。

なおバンパーやフェンダーの脱着方法等、Haynes社整備マニュアルに記載のある項目は、
特記事項がある場合を除いて割愛しましたのでご理解のほど。

それでは、はじまりはじまり。。。



………Citroën BX16TRS 『The early model conversion』………



まずフロントバンパーの交換。

後期モデルとのネジの位置、左右のブラケット共に、形状として問題はありません。
BX0001.jpg
が…交換するにあたり留意すべき点が3つ。



その1:初期バンパーのみに存在する4つのネジ穴(後期モデルでは廃止されている)

白バンパーの方が判り易いと思うのでこちらで見ていきます。
bxbumperF0R.jpg
ロワーグリル上端辺りに穴が4つ、初期バンパーではここにもネジが必要です。
当然ながら後期モデルにはネジを受けるナット類はありません(穴は開いています)から、
ウエルナットやクリップナットを使用する等、装着方法を独自に考案する必要があります。
いずれにしてもホームセンター等で売られている汎用品で代用可です。
なおHaynes整備マニュアル日本語版ではここのネジは外側2本のみとされていますが、
別パーツのロワーグリルと共締めなので、やはり4本あった方が良いように私は思います。



その2:タイヤハウス内の黒い樹脂カバー(マッドガード)を一部カットする必要有り

初期バンパーは、当時流行の(GS譲りともいえる)下部を絞ったデザインが施されており、
フロントフェンダーのフレアを広げた後期モデルではタイヤハウス内のカバーが大き過ぎ、
そのままでは初期バンパーは装着できず、現物合わせで一部をカットする必要が生じます。

フェンダーアーチ内側樹脂カバー、通称マッドガード(ユーノス版パーツカタログより)。
べいくす図1
着色した部分の前方をバンパー内壁のカタチに合わせてカットします。
切り過ぎないよう注意が必要です。



その3:初期バンパーと後期フェンダーとの間に隙間が生じる

これが意外に厄介で…初期モデルでは、、、
bxbumperF1.jpg
バンパーとフェンダーの間に付く黒いサイドモールはフェンダー側に装着されています。

ところが後期モデルでは、モールはバンパー側に付くため、、、
bxbumperF2.jpg
ご覧のようにフェンダーの所定の位置にはモールの影も形もありません。

しかも初期フェンダーはコーナーレンズ下部までサイドモールが回り込んでいますが、、、
bxbumperF4.jpg
上記の後期フェンダーではコーナーレンズ下部が欠損してしまっています。
このため後期モデルに初期バンパーのみ装着する場合、この隙間を埋める必要があります。



さて、それでは後期モデルに初期フロントバンパーを装着します。

写真は後期モデルのバンパーを外し、今まさに初期バンパーを付けようかという状態です。
ナンチャ01R
この時点で上記留意点1及び2はすでに解決済みです。

初期バンパーを装着しました。が、ボディ形状も塗色も後期モデルそのままですから、、、
ナンチャ04R
ちょっとちぐはぐというか、とってつけた感は拭えません。そこで、、、

コーナーレンズをクリアオレンジで塗装。まだモールの隙間は埋まっておらず、、、
ナンチャ03Ra
この中途半端なままの格好で公道を走らせるわけにはまいりませんので、、、

私は金属板を加工して、隙間を埋めるためのパーツを自作しました。
ナンチャ03Rb
サイドモールの代用として汎用ゴムモールを接着。このパーツをネジで固定します。

上記パーツの固定には既存のネジ穴を使います(ユーノス版パーツカタログより)。
べいくす図2
後期フェンダーにはバンパーを支えるツメが装着してあり、これを外したネジ穴を利用。

写真は、自作パーツを隙間部分にネジ留めして装着したところです。
ナンチャ03Rc
これで留意点3も解決。パッと見の違和感は解消されるでしょう。

当初は私もバンパーのみの装着を模索し、上記のように一旦は作業を完了しましたが、
結局考えを改め、後日フロントフェンダーも初期モデル用と交換することにしました。
どこまで追求し、どこで線引きをするか…全てはさじ加減次第というわけですね。
初期フェンダー装着の際、前述マッドガードを一部カットするのは言うまでもありません。
(ご質問いただいた件、これでお答えとなっていますか?)

フロントバンパーについては以上です。



続いてリアバンパーの交換。

リアは、フロントに比べるといささか難儀します。
BX0004R.jpg
ネジの位置や数は同じですが、一部形状が異なるため諸々工夫が必要となるからです。

またもや視認し易い白バンパーで見てみます。
bxbumperR1.jpg
写真は、後期モデルの所定の位置に初期バンパーを合わせてみた状態です。

ご存知のように、後期モデルは幅広タイヤ装着を想定し(GTiとモノコック共用するため)、
bxbumperR0.jpg
リアフェンダーが大幅に広げられています(それに伴いブラケット装着部も変更)。

そのため、初期バンパーでは幅が狭すぎてそのままでは装着できません。
bxbumperR2.jpg
こうして一見すると、何も問題なさそうな初期バンパーですが、、、

よく見ると左右に向けて強引にハの字に広げられたため、サイドが波打って変形、、、
bxbumperR4.jpg
無理な応力がかかって一部には小さな亀裂も生じています。

初期バンパーは後期バンパーに比べて品質は低く強度不足で、保管状況にもよりますが
ちょっとしたことでへこんだり割れたりすることがあり、無理な取扱いは禁物です。
そして肝心な点…このような取り付け方ではブラケットが装着できません(大問題です)。

さて、上記の問題を解決するには、、、
bxbumperR5.jpg
もはや現物合わせで部材を一部カットするより方法はありません。

私が施した加工、こんなに薄くて大丈夫か?と心配になるほどサイドを薄くカット。
bxbumperR6.jpg
ブラケットもそのままでは装着できませんので、まずは相当なサイズにカットし、、、

最小限残した部材にボルトとナットで固定(リベットは後の修理が難しいので不採用)。
bxbumperR7.jpg
PPバンパーは接着に不向きで溶着しても強度を保つのは困難、結果導き出した方法です。
これで私の場合ブラケット部を破損することなく無事に装着できました。
強度が明らかに不足する初期バンパーですから、後期モデルへの装着には気を遣います。

と、ここまででお気づきかもしれませんが、もしもバンパーだけを交換するとした場合、
ベルリーヌよりもブレークの方が断然らくちんです。
ブレークならばリアバンパーは初期モデルとほとんど同じでそのままいけますから。。。

以上でリアバンパーについても終了です。



ついでに、ホイールキャップについて、、、

本来の初期モデル用ホイールキャップは黒色成形のPPでできており、、、
bxbumperR9.jpg
楕円状の溝の部分以外をライトグレーに塗装したもので、黒い部分は元のPPの色です。

しかしながら、私の場合は後期16TRSモデル用の銀色に塗られたキャップを使用し、、、
bxbumperR10.jpg
楕円状の溝の部分を黒く塗装しました(マスキングがびっくりするほど面倒)。
その苦労が報われたか、つや消しブラックが締まってシャープな感じに仕上がりましたが、
このあたり、どこまで本来の姿にこだわるか、でありましょう。。。



あとは仕上げとして、、、

初期モデル用フロントフェンダー装着(勿論コーナーレンズと丸型サイドマーカーも)、
BX0003.jpg
ボディをルージュヴァレルンガ(初期モデル純正色)で全塗装。

元色がルージュフュリオのためボンネットを開けてもほとんど違和感なく、、、
BX0007R.jpg
Egルームの見栄えも良好(傷みがちなコーションステッカーもレプリカを自作し貼付)。

リアのバッジ類も初期モデル用のアルミ製パーツを装着(オートマバッジはCXと共通)。
004R.jpg
結果、サイドミラーとサイドモール後端部、そしてリアフェンダーさえ注視しなければ、
見事に初期モデルに化け果せることとなりました。

内装は後期!外装は初期がすき!という愚かで天の邪鬼な発想から始めたことでしたが、
P8101169R.jpg
相応の時間を研究と実践に費やして充分楽しみましたし、仕上がりも満足ゆくものでした。


しかし所詮これはニセモノであり、巷ではモディファイなどと横文字を使いこの手の行為を
推奨するかのような傾向にあるようですが、私は単に "改悪" でしかないと考えています。


一例として…後期バンパーを見てみます。
bxbumperR8.jpg
かどをアールにし、僅かに折り目を付けたり部分的に補強するなど改良の跡が見られ、、、

初期バンパーとは桁違いにしっかり丈夫に作られています。
bumper比較R
軽量化全盛だったこの時代としては理に叶った設計であり、質実剛健、誠に高品質。


初期モデルはVISAの時代のPP加工技術、後期はAXの時代ですから、たった数年とはいえ、
自動車製造技術の革新を痛感し、より良い製品作りに挑むメーカーの取組みに感服します。

それなのに、なぜ私は、品質の低い初期生産分のパーツをわざわざ取り付けるのか。。。
本物の初期型BXを買えば良いものを、ここまでやるのは何故か?と自問する日々(笑)。

安直な流行語と化したようでキライな言葉の筆頭ですが『自己責任』とはまさにこれ。
こうしたコトを自分がどう捉えどう考えどう納得するか。
十数年前の私はこれを熟考し、これを胸に刻み、己を恥じつつ ”改悪” を行ったのでした…
いやはや。。。



最後にざっと総括をば、、、
初期モデルコンバージョンによって内装は後期、外装は初期という己の理想を具現化でき、
愛車として東奔西走、充実した愉快な日々を存分に提供してくれました。
その間、困るようなことは何らありませんでしたし、継続車検も問題なし。
ただし…慣れない整備工場では型番違いの間違った部品を取り付けられそうにもなり、
相手によっては年式や ”改悪” の事実を正しく報告しないと面倒なことになりかねません。
そうした点で多少なりと余計な気を回したりもしたものです。。。



長くなりました。
BX0006.jpg
これにてレポートは終了です。


写真がばらばらでちょっと見辛い内容となってしまいましたが、、、


お役に立てれば幸いです。
ベイクス冬R
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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No title

とてもわかりやすい文章ありがとうございました。
初期型のバンパー少し弱そうな印象がありましたが、実際そうなのですね。となるとやはり腰が引けます。
もう少し考えてみます。ありがとうございました。

Re: No title

おち様

お読みいただき、ありがとうございました。
後期モデルと比べてしまうのがいけないのかもしれませんが…
実際、キズ付けないよう気を遣いながら乗っていたのは事実です。

私の場合、思い返すと、計画を練っている間に必要なパーツが次々集まってきて、
「もはや、やるしかない」という状況に自然と追い込まれたような格好でした。
そうした何かの『勢い』に乗っておやりになるのが良いかもしれませんね。
そういえば…某ネットオークションにボビンのレストアベースが出品されていますね。
書類有りだそうで…ソレを復活させのも一興かもしれません…いかがでしょうか…

それでは、失礼いたします。
どうもありがとうございました。
プロフィール

喜多村 武

Author:喜多村 武
 映像Director、絵本作り、
 イラスト作画、アニメ制作、
 鉄道模型の設計などしている
 ”アトリエざんまい” な日々。
 最近は大学にて講義をさせて
 いただいたりも…。

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